「ストレンジ・メナスIII」の名言集

ストレンジ・メナスIII-宇宙の彼方へ-

出版社:ブイツーソリューション

発行日:2018/9/21

単行本:320ページ

第七章/64ページ:青木茂

青木の驚きは一瞬だった。ここが現実の世界でない、その答えを目の前の男性から突きつけられた。青木は石橋との戦いの後で、夢の中にいた。
病院の中で戦ったときの出来事が、鮮明に蘇る。山田久美子たちからもらった力を借り、石橋に勝ったと思った時、石橋が放った最後の言葉を思い出した。
「これが最後の力の意味か?」
(よく考えたら、今までもそうだった。地下鉄の脱線事故から今まで)
青木は目の前にいる男性から焦点がはずれ、呆然とした。

 

第七章/70ページ:青木茂とダイチ

次に青木が聞いた音。
明らかに機関銃のようなものが撃ち込まれる音だ。
救急車の横腹にいくつもの穴が開く。運転席のダイチを見ると、必死に運転をしている。
(これは本当に夢なのか? こんなにも胸がドキドキする)
(青木さん。大丈夫。落ち着いてください。あなたが不安定になればなるほど、この世界は石橋の意のまま変貌します。あなたなら出来るはずです)
ダイチは青木に一べつをやった。
その瞬間、救急車が傾き始め、傾斜角度が四十五度に達した。それでもダイチの運転によって横転を免れていた。
青木の意思が弱まったとき、町が変化した。道路が歪み始めたのだ。
(もうだめだ)
ダイチが叫んだ。

 

第七章/84ページ:青木茂と幸恵

自分の身体が、一瞬だが宙に浮いた状態だと気付いた。
なすすべもなく、真下へ一気に落ちて行った。身体が下降する実感は現実のものと同じだ。遊園地にあるフリーフォールのように速度が速い。落ちて行く先に、なにがあるのかがわからないのも脅える理由のひとつだ。
(くそ……落ちる……。本当に落ちているんだ)
真下に落ちる感覚は現実そのものだ。だが、なにか柔らかいものの上にフワッっと落ちた。
青木はなんの痛みも感じなかった。
青木は夢の中にいたこと、外の世界から自分を現実の世界に連れ戻しにきた人たちがいたことの記憶がすべて失われた。
(よかった。助かったのね)
近くで青木に呼びかけた人がいた。
青木はゆっくりと目を開けた。目の前に一人の女性が青木を見つめて座っている。
「あなたは……?」
「どうしてここに?」
「幸恵さん?」

 

第八章/116ページ:青木茂と村山崇

村山のリングと青木のリングがお互いを捜し求めた相手のように引き寄せられた。村山のリングが眩しく光ったと同時に、青木のリングも同じ光を放つ。
「なんだ? この光は? リングがこんな光を放つのは初めてだ」
村山はあまりの眩しさに、リングから目を逸らした。飯島も見つめることができずに両手で目を隠した。
村山は無意識に握りしめている青木のリングを、自分のリングに重ね合わせた。
「青木君。しっかりするんだ。私だよ。村山だ」
その言葉は声としてではなく、川のせせらぎや、小鳥のさえずりのように青木の中へ静かに伝わっていった。青木の顔つきが変わった。
「お父さん。お母さん。なにか聞こえない? 誰かが僕を呼んでいるんだよ。誰だろう。知った人のようだけど。でも思い出せない。この気持ちはなんだろう?」
「青木君。私だよ。頼む。私に気付いてくれ。お願いだ」
一瞬、青木の目線が村山と絡み合った。青木は村山を見た。
「青木君。しっかりしなさい。私が見えるんだね?」
「あなたは……」

 

第八章/125ページ:山田芳夫とポルト

青木が洗脳された大久保らから逃れた頃。山田はエックスの部屋にいた。
「エックス様。わたしは青木君の夢の中にはいれなかった。しかし足立さんが、わたしになにかしたようで、気づいたらここにいた。なにが起こったのですか? 彼らは無事なんですか?」
山田はエックスを見ながら言った。答えはポルトから告げられた。
「あなたは石橋をご存知ですよね? 足立さんは石橋の生まれ変わりなのです」
山田は驚きのあまり言葉を失った。しばらく考えて言った。
「しかし……いや、そんなこと……彼が石橋の生まれ変わりだと知っていながら、青木君の夢の中に行かせたのですか?」
「エックス様のお考えです」
「エックス様。教えてくれませんか?」
エックスは初めて山田を見た。

 

第八章/134ページ:村山崇と大久保光博、青木茂

青木の身体が宙に浮き、ゆっくりと石橋のいる方向へ吸い寄せられた。その間に一人の人物が現れて割り込んだ。村山だ。
「そうはさせない」
村山は青木の身体を大久保のほうに飛ばした。
「村山代表!」
大久保が叫んだ。大久保は辛くも青木をキャッチッした。
「大久保君。どうやらあのときの予言が的中したようだ。メモに書かれていたことだ。私は本来助かるべき人間じゃなかったんだよ。ここでお別れだ」
「そんな……」
村山は青木を見た。
「青木君。君の本当の試練は起きてからだ。それを忘れないでほしい」
「村山さん!」
「青木君。頑張るんだ。これからもみんなと力を合わせればどんな苦難にも立ち向かえる。私はそう信じている」

 

第八章/165ページ:山田久美子と山田芳夫

久美子は朦朧とした意識の中に、倒れる前の記憶を蘇らせた。
(あなたは、わたしのお父さんと話していた人ですね。あなたはいったい?)
(久美子。わたしはまぎれもないお前の父だ。未来にいた)
(未来のお父さん?)
(そうだよ)
(わけがわからない。わからないことばかり続いていた気がする)
山田はカプセルを開けて久美子の手を握って、もうひとつの手は額に当てた。
(なにも言わなくてもいい。お前が思い出せるように、私や青木君がしてきたすべてを教えてあげよう。いずれはっきりと自分自身の記憶として残るだろう)
(よくわからない。けど、あなたは私のお父さんです)
(そうか。よかった。安心した)
(ここはどこ?)
(大丈夫だ。あとで青木君が君を見つけてくれる)
久美子は再び眠った。山田は振り返らず部屋を出た。

 

第九章/195ページ:青木茂

倒れている青木の体が光り始めた。
青木の周囲が、陽炎のようにゆらめいたと同時に、建物が一瞬のうちに消えた。隣にいた永井の姿が蒸発するように消えた。青木は身動ぎもしない。
青木が起き上がった。青木本人の力で起き上がったと誰もが思った。
青木は両手を頭の上に掲げた。
「世界を変えるときがきた!」
青木は叫んだ。同時に世界が割れた。割れたという表現が一番近い。一瞬にして、青木の右手前方に世界が生まれた。反対の左手には、もうひとつの世界が生まれた。
ふたつの世界。
左手の世界がどんどん広がっていく。

 

第九章/203ページ:青木茂と脇坂淳一

端末を奪った犯人の足はとても素早く、距離は離れていく一方だ。
(こんなことになるのなら、普段、もっと運動しとくべきだった)
青木は追いかけるのをやめた。
脇坂は青木よりも早いというだけで、盗んだ犯人に追いつかない。脇坂も走るのをやめた。
偶然、犯人がつまずいて転んだ。チャンスとばかりに脇坂が追いついた。脇坂は犯人を羽交い締めにした。
「すみませーん」
犯人は同じ言葉を繰り返した。ふたりの間に青木が割り込んだ。
「わき……」
ぜいぜいしながら青木は名前すら言えない。
「青木さん。運動不足!」
「ははは。ごめん」

 

第九章/247ページ:青木茂

青木の眼前に広がる光景は、明らかに自分が元にいた世界。砂漠地帯でもなく、空気は黄色くなく、そして青空が広がっていた。自分のいる街がどこかなどと考える以前に、喜びに満ち溢れていた。
(ここがもうひとつの世界)
青木はなぜか腑に落ちた。少し離れたところに新幹線の高架が見えた。
(思い出した。ここは新大阪駅から少し離れた西側の道路だ)
青木は以前の職場で何度か利用した銀行にも気づいた。
(なんだか元気が出てきた。しばらく普通の町並みを見ていなかったからかもしれない)

 

 

 

 

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